融資審査のポイント、減価償却費

減価償却費の過少計上による利益のかさ上げはすぐにバレます

業績の悪い会社の決算書を見ていると、減価償却費の未計上、または過少計上となっているものが散見されます。

 

減価償却費の計上の仕方は決まっていて、国税庁のホームページにも記載があります⇒No.2106?定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)

 

減価償却費は、販売費及び一般管理費中、または売上原価中における費用の項目ですので、これが大きければ大きいほど利益が減ります。

 

よくあるパターンとして、「決算が2期連続赤字となっているので、今度赤字を出したら銀行から融資を受けられなくなる可能性がある。なので減価償却費を計上せずに黒字に持っていこう。」というのがあります。

 

結論から言いますと、これは銀行員に見透かされますので、やってもやらなくてもあまり意味はないものと考えます。

 

それに、経常利益+減価償却費を簡易キャッシュフローと呼んで、その企業の債務償還能力を計りますが、

 

例えば、本当は減価償却費を500万円計上しなければならない場合、

 

 

減価償却を実施しなかった場合は

 

減価償却費   0円
経常利益 300万円
簡易キャッシュフロー=300万円

 

減価償却費を実施した場合は

 

減価償却費 500万円
経常利益 ▲200万円(300万円−500万円)
簡易キャッシュフロー=300万円

 

 

となって、簡易キャッシュフローは減価償却費を計上しても計上しなくても同じになります。減価償却費を計上しなかった場合、見た目は赤字になりますが償却未実施で無理やり黒字に持って行った方が、私が審査をする立場なら良い印象は持ちませんね。

 

見た目が赤字か?黒字か?というよりも、融資の審査では実態としての償還能力はどの程度あるかがポイントになりますので、減価償却費を未計上にしてまで黒字にしたとしても、銀行員にはすぐに見透かされる事は確かでしょう。

投資促進税制による固定資産の一括償却で、わざと赤字にしている場合

今、国の政策で設備投資を促進させる税制が行われています。いわゆるアベノミクスですね。

 

参考(国税庁):No.5433?中小企業等投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)

 

これは中小企業者などが平成10年6月1日から平成29年3月31日までの期間に新品の機械、装置などを取得した場合に特別償却ができる事と、一定の税額控除が受けられるというものです。何でこんな事を認めているのかというと、国はデフレからの脱却を目指してGDP2%の成長を目標にしているからです。GDPは個人消費と民間投資と政府支出と輸出を足して、輸入を引いたものですから、民間投資を増やせばGDPは増えるはずです。しかも今、大企業が大型設備投資をやる場合海外ばかりですので、国内の生産設備が老朽化すると生産効率も下がり、やがてジリ貧になってしまうからです。

 

29年3月31日はもう過ぎておりますが、中小企業庁の平成29年度税制改正の概要にも、中小・小規模事業者の「攻めの投資」を支援する税制措置の拡充としてうたわれているように、一定の要件はありますが、中小企業経営強化税制を創設するそうですので今後も特別償却ができる流れです。

 

固定資産の減価償却は、建物や機械、車両等について償却期間(耐用年数)が決められていて、一括で費用として計上できませんが、一括で償却できるのであれば、税金を支払うくらいなら設備投資をしようという気になります。

 

中小企業庁の平成29年度税制改正の概要によると、生産性向上設備(A類型)の場合、例えば機械・装置(160万円以上)は即時償却 又は 7%税額控除(資本金3千万以下もしくは個人事業主は10%)できるとあります(平成30年度末まで)。

 

大雑把に言えば、工場で使用する機械を1,000万円で購入すれば、即時償却できますので設備をした年度の決算時に減価償却費1,000万円を計上できます。

 

通常は、ものにもよりますけど、耐用年数が10年だったら、10年にわたって減価償却費として落としているものです。

 

大きな設備であればあるほど即時償却した年度の利益が減りますので、赤字にはなりますけど、その分減価償却費も大きくなります。

 

先の例のように、簡易キャッシュフロー=経常利益+減価償却費で銀行は償還能力を判断します。

 

例えば、ざっくりとしたイメージですが、

 

通常の償却パターンだと、

 

期中での機械購入が1,000万円
(初年度の減価償却費 100万円)
期末時点の売上総利益 300万円

 

だったとすると、期末処理により、

 

機械 900万円(1,000万円−減価償却費100万円)
営業利益 200万円(売上総利益300−減価償却費100万円)

 

となります。

 

償却前営業利益は、300万円(営業利益200万円+減価償却費100万円)です。

 

 

これがもし、即時償却できるのであれば、

 

即時償却をした場合、

 

期中での機械購入が1,000万円
(初年度の減価償却費 一括償却)
期末時点の売上総利益 300万円

 

期末処理により、

 

機械 0円(1,000万円−一括償却1,000万円)
営業利益 ▲700万円(売上総利益300万円−減価償却費1,000万円)

 

となります。

 

償却前営業利益は、300万円(営業利益▲700万円+減価償却費1,000万円)

 

となります。

 

 

通常の償却パターンの場合、利益が計上されるので所得がプラスとなり、法人税がかかってきますが、下の場合は赤字なので所得はマイナスとなり、法人税額はゼロ円です。ですから投資が促進される税制なのです。

 

銀行員は当然、実態としての償還能力を見ていますので、営業赤字だから悪いという判断はしません。上記例の場合は、投資促進税制を使って税金支払を抑える為に、わざと赤字にしたんだなと思います。上記の場合も償却前営業利益は同じになりますが、単純に黒字、赤字という見方ではなく、減価償却費も加味して審査をしています。

実は、償却不足の金額は銀行が算出している

私が以前勤めていた銀行でも、固定資産償却不足を算定するシートがあって、決算書に付いている固定資産の償却明細を見ながら、取得年月日、耐用年数、期末の残存価格、減価償却の方法(定率法か定額法)を入力することで、償却不足となっている金額を算定し、貸借対照表の実態のものを作成しておりました。

 

つまり、建物の償却不足が500万円あったとします。

 

決算期における固定資産の中の、建物・構築物の課目が1,000万円あったとすると、1,000万円から償却不足金額500万円を控除して、建物・構築物の残高は500万円であったとみなします。そうやって銀行は実態バランスシート(貸借対照表)を作成します。(多分どこの銀行でもやっていると思います。)

 

同様に不良債権なども控除して実態バランスシートを作成します。それにより見かけは資産超過でも、実態は債務超過となる企業も当然出てきます。

 

これについてはまた他のトピックでお話しようと思いますが、ここでは融資の審査において、償却不足は銀行の審査できちっと把握されており、単純に赤字だから悪い、黒字だから良いという話でもなく、また償却不足の金額については算出されて、資産から控除され、実態としての貸借対照表を銀行が作成している事を知っておいてください。

 

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