融資審査の裏事情?自己査定と融資審査の関係@

融資審査はどこの銀行でも仕組みは同じ?

融資審査の裏事情・・・というわけでもないのですが、恐らくは多くの債務者の方があまり知らないであろう、銀行の審査の仕組みについてお話します。

 

融資審査はどこの銀行でも根幹は同じです。何故なら当局である金融庁が「金融検査マニュアル」という指針を出していて、それがどこの銀行でも融資審査における根幹となっているからなのです。ところが色々仕組みが複雑で一般の方には理解しにくい事もあり、あまり知られていないのが実情です。

 

なので、なるべくわかりやすくさわりだけでも説明してみようと思いました。これを知っていると銀行との交渉においては武器になるかもしれません。

 

銀行の事業性融資審査における前提についてのお話

 

これが金融庁の出している金融検査マニュアルの内、自己査定について書かれてある部分です⇒金融庁の金融検査マニュアル 別表1

 

自己査定って何のことかと思われるでしょうが、要するに自己査定とは、銀行の資産、つまり貸出しているお金が銀行の資産になりますので、それが安全なものかどうかを自前で査定するものです。

 

それによって自行の資産がどれだけ健全なのか?どの程度痛んでいるか?また痛んでいる部分については貸倒引当金をいくら積む必要があるかを計算します。

 

その仕組みについては複雑な要因も絡んでくるのですが、極々簡単に説明したいと思います。

 

その1 債務者の格付けを行う

 

債務者、つまり銀行がお金を貸している個人、法人の格付を行います。その上で「債務者区分」というのを行います。

 

債務者区分とは、債務者を、@正常先、A要注意先、B破綻懸念先、C実質破綻先、D破綻先に区分する事です。

 

以下は金融庁の検査マニュアル別表1からの抜粋ですが、参考までに。要するに、業況、財務内容に全く問題がない債務者(正常先)から、法的に経営破綻している債務者(破綻先)まで、状態を5つに分けてランク付けしているのです。

 

  • 正常先とは、業況が良好であり、かつ、財務内容にも特段の問題がないと認められる債務者をいう。
  •  

  • 要注意先とは、金利減免・棚上げを行っているなど貸出条件に問題のある債務者、元本返済若しくは利息支払いが事実上延滞しているなど履行状況に問題がある債務者のほか、業況が低調ないしは不安定な債務者又は財務内容に問題がある債務者など今後の管理に注意を要する債務者をいう。中略・・・
  •  

  • 破綻懸念先とは、現状、経営破綻の状況にはないが、経営難の状態にあり、経営改善計画等の進捗状況が芳しくなく、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者(金融機関等の支援継続中の債務者を含む)をいう。中略・・・
  •  

  • 実質破綻先とは、法的・形式的な経営破綻の事実は発生していないものの、深刻な経営難の状態にあり、再建の見通しがない状況にあると認められるなど実質的に経営破綻に陥っている債務者をいう。中略・・・
  •  

  • 破綻先とは、法的・形式的な経営破綻の事実が発生している債務者をいい、例えば、破産、清算、会社整理、会社更生、民事再生、手形交換所の取引停止処分等の事由により経営破綻に陥っている債務者をいう。
  •  

出典:金融庁 金融検査マニュアル 別表1

 

もしあなたが、もしくはあなたの会社が銀行から融資を受けている場合、上記のどれかにランク付けされているはずです。

 

その2 債権の分類を行う

 

次、今度は債権、つまり実際に貸し出されている融資金について、銀行が顧客に貸した融資金を確実に回収できるのか?それとも回収不可能なのか?或いは回収に疑問があるのか?という観点から融資金の分類を行います。

 

例えば、債務者区分が「破綻先」であった場合、銀行が担保も取らずに貸したお金は、ほぼ回収は無理と思われますが、これが預金担保での融資なら例え債務者区分が破綻先であっても銀行は回収はできますよね。ですから、債務者区分と債権分類によって、銀行は資産査定をやっているわけです。

 

回収の危険性がない債権がT分類(非分類とも言う)、回収できない危険性が増すごとにU分類、V分類、そして回収不可能、無価値のものをW分類という具合に分けていきます。

 

債権分類には、担保による調整と、保証等による調整を行います。

 

担保による調整とは、例えば預金担保や国債などを担保にした融資金については回収に懸念がありません。各都道府県の信用保証協会付き融資についても、債務者から返済が受けられない場合は銀行は保証が受けられますので同様です。担保や優良な保証によって保全措置が図られているものについてはT分類(非分類)となります。

 

一般の不動産担保の場合、処分見込み額と、不動産の時価額から処分見込み額を引いた額とを分けます。下の図でちょっと説明します。実際には債務者区分によっても債権の分類の仕方が違いますが、それについては後述します。

 

 

債権分類、担保による調整の一例

 

債務者区分:破綻先の場合
自己査定と融資審査の関係@融資審査の裏事情?【銀行員が見るポイント】

 

上の図は、債務者区分が破綻先の例ですが、債権分類の例を示します。土地に根抵当権8,000万円を設定していますが実際には9,000万円の融資を受けていたと仮定します。

 

根抵当権設定金額は8,000万円ですが、実際の土地の時価は7,000万円だと仮定します。

 

すると処分見込額を不動産評価額の70%として計算します。7,000万円×70%=4,900万円となりますが、これがU分類となります。担保となっている不動産の、時価額の7掛けですから回収の見込みはまぁまぁありそうです。

 

もし時価で売れたなら銀行は7,000万円が回収できるわけですが、競売にかかると半値になる可能性もあります。しかし時価で売れる可能性はありますので、不動産評価額7,000万円からU分類を控除した金額がV分類です。上の図の2,100万円の部分ですね。この部分は銀行が回収できるかもしれませんが、可能性はU分類より低いでしょう。

 

7,000万円を超える2,000万円については、担保評価額7,000万円でもカバーできていません。この例では債務者区分が「破綻先」ですので、担保評価以上の部分について回収する事は不可能でしょう。これをW分類としています。

 

銀行がやっていること

 

まず、債務者を、正常先、要注意先、破綻懸念先、実質破綻先、破綻先にランクを分ける⇒債務者区分

 

その次に、融資金について、回収できる融資(T分類)から、もう絶対に回収できない融資(W分類)までを分類する⇒債権分類

債務者区分によって分類の仕方が違う

債務者区分によって債権の分類の仕方が違います。

 

自己査定と融資審査の関係@融資審査の裏事情?【銀行員が見るポイント】

 

図で表すと上の様なマトリックスになります。正常先に対する債権については全てがT分類です。これに対して実質破綻先と破綻先については、T分類(優良保証、優良担保により銀行が回収できる債権)から、W分類(回収できない無価値な債権)まで4段階に分類されます。

 

上のマトリックスは何を表しているかと言いますと、債務者区分と債権分類によって、銀行の貸し出している融資金を回収できないリスクを色分けされるということです。それは何のためにやっているのかと言いますと、貸倒引当金を計算するためにやっています。

 

例えばこちらをご覧頂ければと思いますが、⇒自己査定 - 三井住友フィナンシャルグループ

 

平成23年3月末時点ですので資料が古いですが、仕組みを理解するための適当に選んだサンプルですのでご了承ください。正常先に対する引当率は、融資金の0.23%になっていますよね。正常先はT分類しかありません。この場合、債務者区分が正常先の融資金全額の0.23%を貸倒引当金として算出しています。

 

ところが要注意先になった途端に、要管理先債権ではない要注意債権(条件変更をやっていない債権)の6.53%を貸倒引当金として算出されています。

 

 

また、実質破綻先、破綻先のW分類については引当率は100%ですから、W分類に分類された融資は全額引き当てしなければなりません。

 

貸倒引当金は費用勘定ですので、銀行は貸倒引当金が増加する事を嫌がります。不良債権が増えると貸倒引当金が増加し、利益が減ります。債務者区分のランクが下がっても同様の事が起こります。

 

実際に貸倒になったわけでもないのに、債務者区分が正常先であった企業が、業績不振となってしまい、債務者区分が要注意先となっただけで引当がかなり増えてしまうわけです。

 

さて、前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。

 

 

サンプルの金融機関の場合、貸倒引当金は、

 

債務者区分が正常先の債務者の場合、債権(融資)金額×0.23%でした。

 

ところが債務者区分が要注意先になると、債権金額×6.53%となります。

 

これを銀行は費用として計上しなければなりません。

 

ここで考えて欲しいのは、仮に銀行が融資金利を1%で貸し出した場合、正常先なら貸倒引当金は0.23%で済むので採算が合うのですが、

 

要注意先への融資については、例え2%の金利で貸し出したとしても、貸倒引当金を6.53%として費用計上しないといけませんから採算が合わなくなるのです。

 

仮に融資金利が5%だったとしても採算が合いません。引当は将来貸倒するかもしれないからあらかじめ準備しておくものであって、実際にまだ貸倒しているわけではありませんが、引当が増えると銀行の決算では利益が減ります。要注意先への貸し出しはやればやっただけ損失が増える事になってしまうわけです。

 

銀行は信用第一ですので、利益が減っていろいろ言われるのを嫌います。極端な例では仮に赤字を出してしまったりすると、「あの銀行大丈夫か?」という事になって銀行に取っては商売がやりにくくなります。

 

銀行の審査をやっている人は、まず書類が上がってきたら、債務者区分が正常先か?要注意先か?を見ます。破綻懸念以下はよほどの理由がない限り新規融資はできません。

 

正常先ならプロパー融資でもどんどん貸したい。でも要注意先なら担保か保証協会扱いで貸したい・・・という考え方になりがちです。

 

ちょっと長くなりましたので、自己査定と融資審査の関係Aに続きます。

 

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